WBSC会長から野球ソフトボール関係者みなさまへ 年度末のご挨拶
18/12/2020 1 記事を読む目安時間

WBSC会長から野球ソフトボール関係者みなさまへ 年度末のご挨拶

世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のリッカルド・フラッカーリ会長の世界の野球ソフトボールのリーダーたち、選手、メディア、ファンに向けた年度末のご挨拶。

世界中の野球ソフトボールのアスリート、各団体・組織の方々、提携パートナー、メディア関係者、ファンのみなさまへ

わたしたち一人一人の記憶に刻み込まれ続けるだろう1年がついに終わろうとしています。これまでのスピーチとは異なり、今年のメッセージは大会の結果や、各国の成功を称えるものではありません。2020年を振り返ってすぐ心に浮かぶのは、想像を絶し誰も予期できなかった過酷なCOVID-19パンデミックにより影響を受けた人々のことです。

今日、私たちの敵は私たちの脆弱性を気づかせました。日常生活とスポーツ界を変化させ、今年は全ての主要大会が中止もしくは延期に見舞われました。その中の一つは長らく待ち焦がれた東京2020でのオリンピック復帰でした。

しかし、2020年に直面した逆境にも負けず、WBSCは今後数年続くと予想される困難から私たちの競技とその仲間の未来を守るため、組織再構築を進めてきました。

この経緯で「eスポーツ」への拡大が加速しました。アスリート委員会からの意見を取り入れ、私たちは来年発売されるモバイルゲーム「プレーボール」を通してバーチャル版野球を開発しました。ソフトボールとベースボールのゲームも今後近い将来リリースされる予定です。

また、わたしたちは2021年から2024年までの戦略計画を策定しました。これは公式サイトにも発表されています。これは、WBSCは透明性を大切にし、将来の目標を全ての人と共有しながら達成していきたいと考えるからです。みなさま一人一人がWBSCの未来を作る重要な役割を果たしているのです。

わたしたちは、機能性と効率性の向上のため、連盟の再編成に熱心に取り組んできました。さまざまな部門が際立つ新しい組織構造は、WBSCの公式サイトでも公開されています。

「WBSCは今このもっとも困難な時期において、会員のみなさまをサポートする方法を模索し続けています。」

ロックダウンやその他の規制により引き起こされる経済的制約のため、活動資金の調達がより難しくなりました。これは、特に大会開催や出場する加盟連盟に言えることです。そこで野球とソフトボール部門の二つの作業グループを立ち上げ、関係者たちに代わり、大会の頻度、大会の形式や構造、実施方法などについて「再考」してもらいました。これにより、これから数年直面すると予想される困難に前もって対処し予測することができます。

作業グループの話し合いの結果は2020年12月9日に行われた最後の執行役員会で提案・議論されました。その議論の結果とそれに付随する決定事項は公式サイトで発表されています。WBSCはこうしたもっとも苦しい時期でも会員のみなさまをサポートし続けることができる新しい方法を模索しています。

間違いなく今後数年間はこのCOVID-19パンデミックから派生する問題結果が多くあるでしょう。それは私たちの通信、交流、移動、行動にも影響するものです。例えば、WBSCはパンデミックによる影響を軽減するため、WBSCアカデミーのEラーニングプラットフォームを開校したり、会員連盟、大陸連盟、各委員会、執行役員会などの会合も素早くバーチャル形式に移行しました。これによりプーリーのWBSCスタッフもより簡単かつ頻繁にスイス国外のメンバーと連絡が取れるようになりました。


私たちの競技グローバル化へのもう一つの重要なステップはオリンピック首都の近郊に新たな常設本部「ホームプレート」をオープンしたことです。7月のオープニングセレモニーにはオリンピックムーブメントを率いるIOCのトーマス・バッハ会長がその他のスポーツ界幹部、スイスの地元当局代表とともに出席してくださいました。

バッハ会長から受けた励ましの言葉を今でもよく覚えています。「WBSCの新本部に感銘を受けています。それはその壮大さのためではなく、その優雅さ、スタイル、機能性、また環境保護への取り組み、持続可能な建物であることからです。」とおっしゃいました。そして夏季オリンピック国際競技連盟連合 (ASOIF) のフランチェスコ・リッチ・ビッティ会長も「これは野球とソフトボールがもつ強いオリンピックとの関係を如実に表しています。これはヨーロッパにルーツを持たない競技にとっては非常に重要なことです。野球とソフトボールがIOCにこれほど近いという事実は団結を表す強いメッセージを表しています。」と語りました。

これらの言葉は励ましと希望を与えるだけでなく、決意をもって働き続けるよう私たちを刺激してくれます。そして何よりも、これはWBSCとその世界中の仲間たちが行うオリンピック運動を明確に支持してくれていると言えるでしょう。

これらの言葉はアスリートからコーチ、監督、リーグ役員に到るまでみなさん一人一人に対してオリンピック運動が与える感謝の気持ちを表しています。そして野球とソフトボールの継続的な発展と成長のために自分の時間とエネルギーを情熱的に捧げる皆様にも感謝を示す言葉でもあります。

2020年に達成したもう一つの重要な成果は、IOCからも好評であったWBSCインテグリティユニットの設立です。これは組織内の優れたガバナンスの強化と保護に取り組むことを目標としています。この大切な活動の責任を引き受けてくださったベンチュウ・ロウ事務局長に感謝いたします。

またパンデミック禍であったにも関わらずベースボール5が驚異的な成長と発展を経験したことをここで強調いたします。今年ははじめこの最新競技がユースオリンピック・ダカール2022の種目に追加されたことをIOCと共に発表させていただきました。ユースオリンピック延期により、ベースボール5のオリンピックデビューは2026年まで待たなければなりませんが、ベースボール5は全大陸で繁栄しています。これは野球とソフトボールの発展にとってこの競技がいかに大切であるかを示しています。私たちは各大陸連盟とともに、大陸や地方レベルの大陸競技大会でベースボール5が追加されるよう懸命に取り組んでいます。この重要な課題については、皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2020年を忘れて、また再びアスリートが活躍するのを心より楽しみにしています。3月までにメキシコで行う二つの野球ワールドカップ(15歳以下部門と女子部門)で新たなスタートを切る予定です。

大会は関係者皆様の健康と安全を守るため、無観客で実施する予定です。パンデミックピーク時の7月にメキシコでテストされ、その結果広範な試みであったにも関わらず感染者を出さなかったことから、私たちは私たちの安全プロトコルに自信をもっております。

ワクチンの接種開始が差し迫り、これで来年の夏には通常の生活に戻れる可能性が期待されています。そうすれば東京2020が行われオリンピックへの長らく待ちわびた壮大な復帰となります。そこでは間違いなく私たちの競技がもっとも期待されるトップスポーツとなるでしょう。そしてこれはロサンゼルス2028大会など将来のオリンピック大会に繋がるケースにもなります。東京2020で私たちを代表するアスリートたちは、この競技がいかにオリンピックブランドを高め、IOCの大切な目的実現に支援できるかを示す最高の大使となるのです。

最後に、WBSC執行役員会、各委員会、大陸連盟、各国連盟、準会員、世界中のすべてのリーグ、アスリート、コーチ、審判員、そしてWBSCスタッフのみなさまに、直面する困難にも関わらず私たちの競技の発展のために尽くし、取り組んでくださったことを心よりお礼申し上げます。

そして世界野球ソフトボール連盟を代表して、わたくしは世界中の野球ソフトボール発展に貢献してくださるすべてのみなさまにも感謝をいたします。

リッカルド・フラッカーリ

WBSC会長


2020年レビューシリーズ

2020 - 野球 前例なき1年の国際野球シーズン

2020 - U-18 男子ソフトボールワールドカップ 2020年に行われた唯一の国際野球ソフトボール大会で日本が優勝

2020年 振興発展 世界的なパンデミック禍も発展を続ける野球ソフトボール

2019 WBSC総会からこれまでの1年を評価「多くの意味で忘れられない1年」

2019 レビュー