WBSC Legacy Club  難民キャンプにおけるBaseball5
23/08/2023 1 記事を読む目安時間

WBSC Legacy Club  難民キャンプにおけるBaseball5

WBSCチーフオペレーティングオフィサー(COO)のマルコ・イエンナ氏にインタビューし、難民キャンプにおけるBaseball5の重要性とWBSC Legacy Clubのコミットメントについて話を聞いた。

4月のWBSC Legacy Clubが発足し、Baseball5はWBSCのビジョンである「野球・ソフトボールを発展させ、人々の生活に競技を密着させるとともに、野球・ソフトボールを革新的なプログラムやイニシアチブを通じて、文化的なギャップを埋め、健康や教育水準を向上させ、世界中の社会開発を支援するツールとして活用すること」を支援するツールとして、ますますその重要性を増している。

WBSCチーフオペレーティングオフィサーのマルコ・イエンナ(以下:MI)氏はこのインタビューで、特に難民キャンプにおけるBaseball5の重要性とWBSC Legacy Clubのコミットメントについて語った。

Q1)WBSCはどのようにしてヨルダンのアル・アズラク難民キャンプにBaseball5を導入するに至った経緯を教えてください。

MI)「このプロジェクトは急速に発展しましたが、それは長年にわたる進化の結果です。国際野球連盟(IBAF)と国際ソフトボール連盟(ISF)は10年前に合併してWBSCになりました。運営組織が成熟し、影響を与えたり重要な遺産を残すことができるレベルに達したのです」

「私たちは2017年と2018年にブルンジのブジュンブラで開催されたフレンドシップゲームでBaseball5を導入しました。この大会はスポーツを通じて平和を促進することを目的としており、ブルンジ、ルアンダ、コンゴ民主共和国から200人以上の子どもたちが参加しています」

「さらに2019年には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が管理する最大のシリア難民キャンプであるヨルダンのザータリにBaseball5を導入しました。2日間のセミナーを開催し、キャンプに住む8万人の多くにアプローチすることができました。WBSCはその後すぐに、難民のためのスポーツ連合(Sport for Refugees Coalition)のメンバーとなりました」

Q2) WBSCはスポーツ連合のメンバーとして、どのようなコミットメントを約束したのでしょうか?

MI)「WBSCは、難民に包括的で安全なスポーツ構造へのアクセスを改善し、難民にスポーツの機会を提供するために野球/ソフトボールを利用することを約束しました。2020年、私たちはテコンドー人道基金(THF)および世界テコンドー(WT)と不平等を是正し、平和と社会発展を促進するための覚書を交わしました。残念ながら、パンデミックの発生により、私たちのその取り組みは2022年9月まで遅れてしまいました」

Q3) 2022年9月にはどんな活動をしたのでしょうか?

MI)「ヨルダンのコーチを3ヶ月のコースに参加させ、彼がWBSC Baseball5 アズラク難民チームのヘッドコーチになりました。WBSCは40人の難民とともにHope and Dreams Sports Festival(希望と夢のスポーツフェスティバル)に参加したり、アズラク難民キャンプの人道的スポーツセンター内にBaseball5のフィールドを開設したりしました」

Q4 )Legacy Clubの目的は何ですか?

MI)「野球やソフトボールを通じて、教育、医療、社会開発の水準を向上させることを目的としたプロジェクトを支援することです。アズラクでの私たちのプロジェクトには、50人の難民の少年少女が参加しています。彼らは7月に近隣の村と競い合いました。WBSCフラッカーリ会長もその成功を見届けました

Q5) 理想的な環境とはほど遠い中で、Baseball5が成功を収めたのは驚きです。

MI)「Baseball5をプレーするのに必要なのはボールだけで、それがこの若く成功した野球・ソフトボール競技の強みです。Baseball5はアクセスしやすく、包括的です。第1回Baseball5ワールドカップにアフリカの3カ国が参加したことがそれを証明しています。Baseball5を通して野球が伝統的にない地域やコミュニティでも野球/ソフトボールにアクセスできるようになりました。パレスチナもその一例で、Baseball5はこの3年間ガザ地区で定期的にプレーされています」

Q6) WBSCの大会に難民チームが参加することはありますか?

MI)「間違いなくあります。国際オリンピック委員会(IOC)は、東京2020大会でオリンピック難民チームを結成しました。これはインパクトがあり、8万人の人々が困難な状況に置かれていることを誰もが認識せざるを得ませんでした。大会では、29人の難民が12競技に参加しました。それは、希望と連帯という素晴らしいメッセージを世界に発信するものでした。私たちは、10月にトルコで開催される第1回 Baseball5ールドカップと、2026年にセネガルのダカールで開催されるユースオリンピックに、アズラックチームを派遣することを目指しています。もちろん、未成年の難民のチームを編成することの難しさや限界は承知しています」

Q7) WBSCはこの活動にどのように資金を提供したのですか?

MI)「IOCからの5万ドルの寄付のおかげでスタートしました。選手をサポートするための水と食料を保証し、地元のコーチを教育し、最初のイベントを開催するのに十分でした。もちろん、もっと資金が必要です。最終的な目標は、1つ以上の難民チームを国際大会に参加させることです。私たちはまた、難民の少年少女たちを教育面で支援したいと考えています。誰もがこのプロジェクトを支援するために寄付することができますので野球ファンの皆さんの寛大な気持ちにも頼りにしています」

Q8)WBSCプロジェクトはヨーロッパの移民緊急事態に対応しています。他の人道的プロジェクトは考えていますか?

MI)「移民問題は、私たちの社会が抱える多くの問題のひとつです。WBSC Legacy Club は、野球・ソフトボールを通して教育、医療、経済、社会の発展における不平等をなくすことを目指しています。地域社会が将来の世代のために、より持続可能な未来を発展させることをサポートすることが、私たちが目指すWBSC Legacyなのです」