連盟特集 ブータンが野球ソフトボールの世界繁栄を願う
25/02/2022 1 記事を読む目安時間

連盟特集 ブータンが野球ソフトボールの世界繁栄を願う

WBSCに新たに加盟したブータン連盟の共同創設者で現会長のKarma Dorji氏とMatthew DeSantis氏がWBSCのインタビューに答え、ブータンでの野球、ソフトボール、最新競技ベースボール5について語った。

2022年のWBSC連盟特集第2弾はWBSCの最新加盟会員であるブータン野球ソフトボール協会(BBSA)。

WBSC執行役員会はブータンの加盟を2021年7月に承認したが、ブータンの連盟が初めてWBSCにコンタクトをとったのは2013年のことだ。

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共同創立者で連盟会長の一人はKarma Dorji氏(42)。ブータンオリンピック委員会でも働いていた経歴を持つ。

「日本での世界子ども野球フェアに招待されました。」とDorij共同会長はWBSCに語った。「派遣団の団長として訪問し、日本で目にしたものに感動しました。野球はとても楽しそうで、子供にとって魅力的なスポーツだと思いました。野球には規律も必要ですから、若者にぴったりだと思ったんです。高原地帯で育った私たちは強いDNAがあるから、大丈夫だと思いました」

Dorji氏はMatthew DeSantis氏に協力を仰いだ。BBSAの共同創立者であるアメリカ人のMatthew DeSantis氏はパートタイムでオリンピック委員会のボランティアを務めていた。

DeSantis氏はブータンオリンピック委員会の会長His Royal Highness Prince Jigyel Ugyen Wangchuck氏と長く親交があり、二人はアメリカ、コネチカット州の高校でからの付き合いだった。彼はブータンに住んで10年になる。現在ブータン国内で旅行会社「MyBhutan(ブータン野球連盟の設立スポンサー)」とブータンの海外送金などのテクノロジー会社「Beyul Labs」の二つの事業を展開している。

「ブータンに移ってきたとき、野球をブータンに紹介しました。王室のスポーツ振興責任者が親愛なる友人なので、自然にこの件をサポートすることになりました。野球はコミュニティーを団結させ、心から熱中させる素晴らしい力を持っています」(DeSantis氏)。

DeSantis氏はブータンの人たちにもっと野球に親しんでもらおうと、2013年初めに一般の人たちを対象に1日講習会を開いて野球を国内に紹介した。

「数週間のうちに、600人から800人の子供達が毎日集まるようになりました。講習したのはティンプーの警察や軍事施設付近で行われていたため、若い人たちにも目につきやすかったようです」

国内のクリケット競技に精通している人など、クリケット選手たちもこのリーグに参加した。彼らのクリケット選手としての技術力は瞬く間に野球に応用され、すぐに競争力のあるチームができた。DeSantis氏とDorji氏はコーチとしても貢献するが、多くの関心ある若者たちにコーチ技術も身につけさせることが必要であると考えた。

「将来的にはユースのコーチを育成することを目指して、まずは成人リーグを作り、45名の選手が首都ティンプーにあるサッカー場やクリケット場で野球の試合をしました」(Dorji氏)。

ここでブータンの野球振興は挫折に直面し、成人リーグも休止した。唯一の焦点はトレーニングを受けたブータン人の成人コーチによるユースを対象としたセミナーとなった。彼らは振興プログラムを最大限に行ない、ユース講習会も続けたが、若者の間で広がる野球への関心の高まりに十分についていけないほどになった。

転換が訪れたのは2016年のこと。ラモン・リエゴ氏がDeSantis氏に連絡を取った時だ。

「ラモンは、私たちが達成した草の活動が他国の競技振興活動と比べていかに強力かを教えてくれました。そして、国際関係を構築することの重要性を説き、数年間を目標に用具提供スポンサー、MLBやKBOのプロリーグ、政府省庁などと関係を結ぶように勧めました。こうして築いたネットワークを経て、私たちはWBSCと出会うことができたのです」(DeSantis氏)。

Dorji氏とDe Santis氏が2013年にアメリカ、オレゴン州の非営利団体「Bhutan Cultural Exchange(BCE=ブータン文化交流」の支援を受けることで、ブータンの野球は2019年にまた一歩進展した。これにより同団体はパンデミック中に8名のブータン人の常勤職員を雇うことができた。現在彼らはさまざまなリーグの再開に向けて動いている。

「まずは球団、そして次に進みます。公式競技として認められました。BBSAの定款を草案し、報告書をブータンオリンピック委員会に提出し、ブータンオリンピック委員会にも承認され加盟、その後WBSCの加盟入りを果たしました」

ブータン野球ソフトボール連盟には今常勤職員が8名いる。

「夢を叶えるにはチームワークが必要です」とDorjiはメールでこう伝えている。まさに彼らは一丸となって取り組んでいる。

「職員たちにWBSCアカデミーの入門コースに参加するようにお願いし、そのあとコーチコースの第一段階にも参加しました」

Dorji氏、DeSantis氏、そして職員が一致団結して取り組んでいる。

「国内のさまざまな地域で野球を紹介しましたが、素晴らしい経験でした。多くの原石を見つけましたし、5つの地域がクラブ登録もしてくれました」(Dorji氏)。

この発展計画の第一段階は首都ティンプーで行われた。

「DeSantis氏の助言に従い、一つの地域で集中して発展プログラムを行うことにしました。一方でそのほかの地域の独立クラブの活動もサポートしていました」

BBSAは2021年5月にベースボール5を導入。

2021年12月18日、ブータン初のユースリーグ(U-15)を設立した。

ティンプーの5つの学校がレギュラーシーズン21試合を行なった。(Changangkha Middle Secondary School, Decheoncholing Higher Secondary School, Thimphu Primary School, Druk School and Taba Middle Secondary School)このリーグには総勢90名(男子45名、女子45名)が参加した。

国内最初の野球場でこの大会は行われた。

「Changangkha middle secondary schoolから同校のサッカー場を使用する許可を得ました。そこでまずグランドを3週間かけて整備し、初のブータン野球場が誕生したのです」(Dorji氏)。

発展プランでは2022年9月に第2回リーグも予定している。

「第2地区でさらに5校を加えて行うつもりです」(DeSantis氏)

BBSAはユース講習会を行うことで野球を広めるよう務めている。

「土曜日ごとに一般向けの講習会を行っています。ブータンの人口はわずか77万1000人ほどの小さい国ですが、うち61パーセントは29歳以下です」

U-15リーグに加え、近い将来成人リーグ(16歳以上部門)を今年の後半に再開したいと考え、冬にはソフトボールの冬キャンプも導入する。

「新しい選手たちの半分ほどは女子選手なので、ソフトボールの道も選べるようにしたいと考えています」(Dorji氏)

BBSAはまた12月にはベースボール5のウィンターリーグも計画中だ。

その次の夢はブータンのベースボール5代表チームを編成することになるだろう。

「WBSCの実績を信頼し、これまでのWBSCの活動をよく理解しています。WBSCは素晴らしい事業を行なっていると思います。私たちにはまだまだガイダンスやアドバイスが必要です。WBSCの教育プログラムも受けるつもりです。他にリクエストがあるかと聞かれれば、コーチや審判員育成のために招待をしてもらいたい、そしてU-15部門の国際大会に参加したいなどです」

そして最後にDeSantis氏は「これからも成長していけると思います。多くの才能を見つけましたし、短時間でここまで達成できたことはブータンがこの地域で野球発展の中心的存在になれることを意味していると、私たちは自信を持って言えます」と結んだ。